6話
「はいはい、じゃあ帰りますよ」
西原はこだわりもなく、にっと笑って見せた。そして、つまんでいたチョコレート菓子を冬四郎の前に置くと、紅茶を飲み干した。
「お前、これどうすんだよ」
「え?疲れた時は甘い物ですよ」
「…太る」
「何、女子みたいな事言ってるんすか?宮前さん、甘い物苦手でしたっけ?」
「自分からはあんまりだな」
袋を開けてしまっているからと、冬四郎はつまむと口に入れて、ぼりぼりと噛んでいた。だが、甘すぎるのかすぐにコーヒーで流し込むと、タバコを吸い始めた。
「好まないみたいですね」
くすくすくすと笑うと、西原はパーカーを羽織った。そして鼻まで隠れるように、くるっとマフラーを巻いた。冬四郎の前に置いた菓子を1つ口に入れもごもごさせながら、帰りまーすと出ていった。
「あいつ…何しに来たんだか」
「それは、宮前さんの様子も気になるから来てるんだと思いますよ?気晴らしも兼ねてると思いますけどね」
京井は机の上に広げられている菓子を集めて、1つの袋に入れると西原が放置していった紙コップと共にキッチンに持っていった。
「そんなに…変ですか?」
「変というより、心配です」
「ここに集まる人たちは、心配性ですよね」




