6話
良かった、と笑みを浮かべた西原の顔にも疲労は色濃く浮かんでいる。
「西原さん、顔色悪いですよ?眠れてますか?」
逆に京井から心配された西原は、ははっと笑って誤魔化していた。襲撃があってからというもの、いつ、何が起きるか分からないうえに、むつが利用されるとなると、気がきではなく夜もおちおち眠っていられないのだった。
「そうだぞ。大体、お前毎晩何しに来てんだよ?帰って寝ろよ。捜査しろよ」
「捜査なんて最初から手詰まりですよ。ここに来て気晴らしと様子を見ておかないと心配で心配で」
「京井さん居るから大丈夫だ」
「あ、そうだ。京井さん、京井さん。京井さんって何者なんですか?ホテルに旅館に飲食にと幅広く経営をしてる社長ってだけじゃないですよね?強いみたいですし。むつのお母さんのお友達って…いったい何歳なんですか?」
興味津々と言った様子で、西原が聞くと京井は困ったような笑みを浮かべたまま、助けを求めるように冬四郎を見たが、冬四郎はゆるゆると首を振るだけで助けてはくれそうにない。
「まぁ…若くはないですよ?えぇ、まぁ…はい…西原さん、帰って休まれてはいかがですか?」
「何ではぐらかすんですか?しかも、下手くそなかわし方しましたよね?」
「あ、あの…いえ、まぁ…あ、ちょっとまぁ言えない事もありますからね。お気になさらずに」
京井はそう言って、にっこりと笑ってみせた。やけに営業的な笑みだったが、西原はふーんと言っただけで大して、気にしてる様子もない。