5話
「まぁ…でしょうね。それで、さっき言っていた薬って何の事ですか?」
「…麻薬みたいな物だな。その成分とか詳しくは分からないが、幻覚を見せたりするのもらしい。それを使って、むつに日本刀のありかを言わせたんだろうな。そして、それを使ってむつに言う事を聞くようにさせたいのかもしれない。日本刀を手に入れても、使える者がいなければ意味がないからな」
「あれって、それなりの能力がある人なら使えるんじゃ…?」
日本刀を抜く事も出来なかったと西原が拗ねたように言うと、男は首を傾げた。
「俺もあまり詳しくは知らないが…あれは特別な品だとは聞く。持ち主を選ぶと」
「日本刀の事は、むぅちゃんから聞けば良いとして…あなた方は何を目的としているんですか?何者と聞くべきでしょうか?」
冬四郎も何を相手にしているのか分からないと言っていたように、西原も京井も相手方の実態も何も知らない。
「妖の退治だな」
男は、ちらっと京井に視線を投げ掛け、はっきりと言いきった。
「悪さをする者ばかりとは限らないのに、ですか?」
「そうだ。良い悪いの区別なく…妖はこの世の理から離れた存在だからな。それを消していくのが、俺たちのしている事だ」
「あなたは…そういった事をするのを善しとしているというわけですね」
京井の口調はどこか悲しげだったが、そこには軽蔑のような響きがこもっていた。男は京井の方を見たまま、何も答えない。