5話
手当てを終えると、西原はキッチンに入っていきコーヒーを入れてきた。男の分をどうしようかと悩んだが、とりあえず仲間外れはよくないと、コーヒーを入れると紙コップを机に置いていった。
「それで、次にあいつらが何をしてくるか予想はつかないのか?」
「あ、それよりも…署とここに乗り込んできたむつは?本物じゃないですよね?」
西原が聞くと、男は頷いた。それを見て、冬四郎も京井も安心したような顔をした。
「だが、むつを利用してくるだろうな…偽者か本物かの見分け…まぁつくだろうが。つかなかった場合、目の前で殺される可能性はまだあるからな」
「やっぱり切り札なんですね」
西原はタバコに火をつけると深く煙を吸い込んで、ゆっくりと口から吐き出した。冬四郎が人差し指を西原に見せ、タバコを1本貰って吸い始めた。
「切り札なのかもしれないが…もて余してるみたいだな」
「あーむつが素直に言う事聞く時ってないですしね」
染々とした口調で西原が言うと、冬四郎は苦笑いを浮かべ、京井は首を傾げていた。その様子からして、むつが素直に言う事を聞くのは相手による事がよく分かる。
「それで?日本刀が欲しいのは分かった。手に入れる為にむつを監禁してるのもな。けど、むつは日本刀にありかを話したんだろ?それなら、用はないはずなんじゃないのか?」
煙を吐き出しながら冬四郎言うと、男はゆるく首を振った。真っ黒な髪の毛が、さらさらと仮面に当たっている。
「本来ならばな…けど、むつは能力面優れているから、それも欲しいんだろうな」
「つまり…仲間に引き入れて妖たちを殺す手伝いをさせたいという事ですか?」
京井が言うと、男は頷いた。
「けど、むつがそれを望むわけがないからな」