5話
「兄弟だと…癖まで似てくるのか?」
大人しく手当てをされていた男が、呟くと冬四郎は手を止めて男の方を見た。
「むつもテープじゃなくて、巻き始めと終わりで縛っていたからな」
「テープじゃすぐに外れるだろうが」
「…言う事まで同じか」
くっと男が笑うと、冬四郎は少し意外そうに目を見開いた。そして、ぎゅっと包帯を縛った。男は痛がる様子も見せずに、くっくっくっと笑っている。出血の多い怪我をしているにも関わらず、痛がりもせず笑っている男を、冬四郎が気味悪そうに見ていた。
「ありがとうな」
素直に礼を言われ、冬四郎は短くあぁと言っただけだった。呆気に取られている様子の冬四郎を、西原と京井は面白そうに見ていた。
「いぬ…じゃない、あんたも悪かったな」
男が京井にも謝ると、言われた本人ではなく西原が、うんうんと頷いていた。
「事務所、狭いですからね。仲良くしてくださいね」
「保護者かよ」
「気分は保護者ですよ。全く、みんなして喧嘩腰で。何なんですか?協力し合えば良いじゃないですか、こんな時くらい」
「いや…西原君。こいつ、むつと同棲してたらしいぞ?仲良く出来るか?」
「あ、そりゃ無理です」
西原が即答すると、京井がくすくすと笑っていた。