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5話
「監視が多すぎる…あいつ、何かやらかしたかもしれないな」
「あの…むつと会えたんですか?」
おずおずと西原が口を挟むと、男は西原の方をじっと見ていた。表情の分からない顔を、こうも向けられている事が気まずく思うものかと知った。
「あぁ…顔は見た。声をかけてみたがあまり分かっていない感じだったな」
「お知り合いなんですよね?」
ちくりと京井が嫌味のように言うと、男は頷いた。
「薬が強いんだろうな。それに、食事もなく閉じ込められてる…体力も気力も限界なのかもしれないな、あの様子じゃ」
「それをほっとくつもりですか?」
「…あぁ、可哀想だがな」
「協力するつもりありますか?」
京井の細められた目には明らかに、怒り以外の物が込められている。隠そうともしない殺気のような物に、西原は寒気がしていた。
「俺にも勝てない2人と1匹に何が出来る?」
ぼそっと男が呟くと、がたっと冬四郎が立ち上がり、それ同時に京井が男の胸ぐらを掴み持ち上げていた。床から足が浮いているというのに、男は焦る様子もない。