5話
「…本当に仮面つけてますね。だっさ」
西原が思わずといった感じで言うと、京井がぶはっと吹き出して、肩を揺らしてくつくつと笑っている。冬四郎も流石に、呆れた顔をしてフォローの言葉も何も思い付かない様子だった。そんな中、西原はしまったとでも言いたげに、手で口をおおっていた。だが、謝る気はないようだった。男は何を思っているのか、西原の方にじっと視線を向けていたが肩を大きく上下させて溜め息をついただけだった。
「…むつは、日本刀の場所を吐かされたみたいだな。だが、そのおかげで今は人らしい扱いを受けているぞ」
仮面の下からくぐもった声で男が言うと、京井と西原は驚いたような顔をしていが、冬四郎だけは怪訝そうな顔をしていた。
「お前、居場所知ってるなら…何故それを教えない?そんな風に言われても信用ならないぞ」
「そうだな。だが、場所を教えた所で…お前たちごときで、むつを救い出せるわけじゃない」
「お前なら出来ると?」
「無理だな」
冬四郎が今にも飛び掛かりそうな雰囲気を見せているが、男は素知らぬ顔をしてさらっと無理だと言った。冬四郎はふんっと嘲るように鼻で笑った。冬四郎のそんな様子を西原は、物珍しそうに見ている。どんな事件の最中であろうと、どんなに嘘臭い情報提供者であっても、冬四郎が他人に対してそんな態度を見せる事はあまりない。よほどに、相手が気に入らないのか、信用出来ないのか。西原は、両方だなと思い溜め息をついた。