5話
「あ、そうそう。忘れてました…」
いつもの様子が戻ってきたのか、西原は紙コップを机に置くと、冬四郎の隣。普段ならむつが使っている机の隣の、空いている椅子に座った。
「部屋、また荒らされたんですよ。言いましたっけ?で、ベッドが壊されてましたから」
「明らかに、そこに的を絞ったわけか…」
「むぅちゃんが耐えかねて言った…」
京井が呟くと、冬四郎が深い溜め息をついた。日本刀を簡単に渡さずに、機会を待つと言っていた冬四郎だったが、そうも言ってられない状況に、なりつつある事を感じているのかもしれない。
「じゃなきゃ、ベッドだけを壊すのは…おかしいですもんね。どうします?ってか、片車輪は?」
「あいつは勝手に動いてる…ってより、追って行った。何か、責任感じてるのか知らないけど…真面目なやつだよ」
冬四郎が奥を指差した。何かと西原がそっちに顔を向けると、段ボールで塞いである窓の横が、また割れている。
「窓からの出入りがお好きなやつらですね」
「そういう事だな。俺もふらっとしてくる」
ずつと黙っていた山上は立ち上がり、ポケットにタバコと携帯を落とし入れた。そして、コンビニにでも行くかのようにふらっと出ていった。