5話
京井が、やれやれと言いたげに肩をすくめて見せた。冬四郎は、ふんっと鼻で笑っている。よろず屋で何があったのか分からない西原は、きょとんとした顔をしていた。
「こっちでは、仲間がわざとむぅちゃんの覆面を外して、日本刀を渡さなければこいつを殺すって脅されたんですよ。それで、仕方なく宮前さんがダミーを渡してお引き取り頂いたわけです」
「えー?って事は、やっぱり切り札として置いておきたいって事じゃないですか?それなのに、部屋に死体を置くなんて…」
「そこは1回こちらをがっかりさせといてってやつじゃないですか?本当は生きてるってなれば、大人しくこちらが言う事を聞くと思ったんでしょうね」
「…それか、もっと違う予定だったのを急遽変更させたのか、だな。何にしても…むつを切り札に出来ると思ってる辺りが…」
バカだよな、と冬四郎は呟いた。西原と京井は顔を見合わせて、眉間にシワを寄せていた。妹を人質に取られようとも、本当を渡さなかった冬四郎に対し西原は少し不満を持っているかのようだった。
「本当に、死んだらどうするつもりですか?」
「…むつがか?」
「他に誰が居るんですか?」
怒りを含んだような西原の声を聞きつつも、冬四郎は落ち着いたもので、無精髭を指先で撫でていた。