5話
よろず屋に着く頃には、また雨が降り出していた。西原はバイクを停め、エレベータに乗り込みながら、肩や袖の水滴をぱたぱたと払った。何となく、憂鬱な気分だった。
「…失礼します」
一応、ノックをしてドアを開けた。冬四郎と京井、山上と片車輪がむくれたように椅子に座っていた。室内は前よりも、ぐっちゃぐちゃになっていた。ここでも、そうとに暴れられたんだなと西原は思ったが、口には出さなかった。口には出さなかったが、表情には現れていたようだった。
「汚くはない。散らかったんだ」
山上がむすっとしたように言うと、西原はそうですかと苦笑いを浮かべるしかなかった。
「…ま、それより宮前さん。これが不審者の画像のコピーです」
疲れたような顔をした冬四郎の前に、何枚かのコピー用紙を出して並べた。冬四郎はちらっと見ただけだったが、何か気になった事でもあったのか手に取って眺めていた。
「どうぞ」
「あ、すみません」
京井が奥から出てきて、立ったまま冬四郎の様子を伺っていた西原に、コーヒーを手渡した。寒い中、手袋もしなかったせいか冷たくなりすぎていて、受け取った紙コップが熱く痛い程だった。