5話
「もしもし‼宮前さん、大変です…そっちに」
『むつが現れたぞ』
「え‼もぅ!?あの、こっちにも…出ました。覆面のやつらの中に…」
西原は身をかがめて、口元を手で隠すようにしながら、小声で言った。電話の向こうの冬四郎は、うーんと唸っていた。
『いつだ?』
「つい、今さっきです…本当、2分前とかの事なんですけど。署内を荒らして、出ていきました」
『それなら、同時くらいか。むつが2人も居るはずないからな…どっちも偽者か』
「片方は本物か…俺、炎出すの見ちゃいました」
電話の向こう側の冬四郎が何を考えているのか、西原は気になって仕方がなかった。無言で何も聞こえない時間が長すぎて、西原は不安になってきていた。
『そうか…可能性あるかもな』
溜め息混じりのかすれた冬四郎の声に、西原は酷く傷付いたような顔をしていた。伝えるべきではなかったのかもしれないが、言っておかなければならないと思っていた。
「…あいつらと手を組んだから取り返しにやってきたんじゃないですか?」
『…ってなると、これ以上は何もする事無いな。とりあえず…こっち来れるか?』
「はい。警視正いらしてるので、少し話をしてから向かいます」
憂鬱な気持ちで電話を切った西原は、重たい溜め息をついた。晃は溜め息をついたものの、その顔は西原のように沈んだものではなかった。