5話
西原は割れた窓に駆け寄り、下を見てみたが3人の姿はどこにもなかった。あっという間の出来事に、西原は溜め息をついた。そして、まだ床に仰向けのまま倒れている晃に駆け寄った。
「だいじょ…おわっ‼」
起こそうとしたはずが、晃に胸ぐらを掴まれて引き寄せられた西原は、思わず両手を床についた。
「今、見たのは…誰にも言うなよ」
晃も手を伸ばして覆面がとれかかった時に、その顔を見たのだろう。険しい表情をしていた。西原は頷くとだけだった。
「…惨敗だったな」
「そうですね。相手は、普通じゃなさそうでしたから…仕方ないかもしれませんが」
「お前、あんまり普通じゃないとか言うな。俺の妹が異質みたいに聞こえるぞ」
「あ…いや、そんな…すみません」
西原の胸ぐらから手を放し、また床に背中をつけた晃は、はぁーと深い溜め息をついた。
「あいつらを追え」
「たぶん、よろず屋に向かったと思います。向こうには、宮前さんも山上さんも居ますから…」
大丈夫ですよと言いかけた西原の携帯が鳴った。画面に表示されている名前は、冬四郎だった。噂をすればなんとやらかと思い、西原はすぐに出た。覆面の者たちの事をすぐにでも、伝えなければと思っていた。