5話
「宮前晃に西原駿樹か…まぁまぁだな」
覆面の者は値踏みするかのように、2人をじろじろと見て、嘲笑うように息をついた。
「こっちの事を、よく調べてあるようだな」
「あぁ、あの女はなかなか口を割らないからな聞き出すのに苦労もしたがな。さて…そろそろ出るとするか。警察は数に物を言わせてくるからな」
大柄な覆面の者が窓の方を指差した。微かに、パトカーのサイレンの音が聞こえてきていた。まだ近くはないが、他の署からの応援か何かだろう。
西原と晃が窓の方に気を取られている間に、覆面の者はさっと窓に走りよろうとしていた。それにすぐ気付いた晃が追い掛けた。がしゃーんっと窓を割って、大柄な覆面の者が先に出ると、あとから2人も続こうとした。晃の伸ばした手が、覆面に触れたのかぱらっとはだけた。目元しか見えていなかったが、口元まで見えた。一瞬であったが、西原はその顔をした者と目が合った。
「あ…」
名前を呼びそうになったが、その前にその覆面の者の周りを囲むように炎が上がった。ごおっと凄い風が起き、机や椅子を倒しながら、晃が吹き飛ばされた。
風と炎が収まった時には、誰も居なかった。