5話
「ま、気にしないで下さいよ。それより警視正殿は下がってるべきじゃないですか?こういう時って」
「肩書きが上なやつほど、前に出ないとな。下のやつらに示しがつかないだろ?」
西原と晃は、話をしながらもドアの方からは目を放さない。どんっと大きな音と、男たちの野太い声がしている。そろそろ来るな、と西原は警戒していた。ここには、日本刀はないと言った所で大人しく引き下がるはずもない。それに、向こうの目的をこちらが知っていると、教えてやるわけにもいかない。
いつ来るかと警戒していると、どんっと大きな音と共に、ドアが外れて内側に倒れた。ドアを蹴破ったのか、倒れた扉を踏んで先ずは小柄な覆面の者が2人入ってきた。あとから、のっしのっしと大柄な覆面の者が入ってきて、辺りを見回した。
大柄な覆面の者が片手を上げると、それを合図にするかのように2人が一気に走りよってきた。1人は途中から床に手をつき動物のように走り出したが、かなり早い。西原と晃のすぐ目の前まで迫ってきていた2人だったが、並んでいる長机に足をかけ飛び上がると、悠々と西原、晃を飛び越えた。
「…まじかよ」
すぐに振り向き、相手の腕でも掴もうと手を伸ばした西原だったが、逆にその手を引き寄せられ腹に強烈な蹴りを喰らった。ぐっと呻き、前屈みになった所で相手の振り上げた足が後頭部に直撃しそうになっていた。それをぎりぎりで回避出来たものの、腹に受けた衝撃が強すぎてすぐに体勢を立て直す事も出来ない。