5話
晃は顎をしゃくって見せた。西原はこくりと頷くと、残っている者たちから少し離れた。
「どうなってんだ?」
「むつを拐ったやつらです…あいつら、むつの日本刀を狙ってるみたいでして」
こそっと西原が言うと、ふーんと晃は返事をした。その声がやたらと低く、威圧感を感じるもので西原は緊張した。スラックスのポケットに手を入れなが、ドアの向こう側を見ている。
「捕まえろ。全員」
低い声で命令され、じろりと睨まれた刑事たちはびくんっと肩を震わせた。西原は、くすっと笑っていた。
「相手はたかが3人だぞ?現職の警官が、こんな所に閉じ籠っていて恥ずかしいと思わないのか?」
西原はにやにやしながら、マフラーを外してコートを脱いだ。口元には笑みが浮かんでいるが、目は少しも笑っていない。
「大柄なのより、小柄なのが1人…手強そうでしたよ。素早いですし」
「そうか。ま、何とかなるだろ?警察署が3人で制圧なんてされてみろ?いいニュースになるな」
「ですね。そろそろ、外は限界みたいですし…警視正、運動不足とかじゃないですよね?」
「ここに居るやつらよりは…ましだろ」
「ですね。将来のお兄さんに良い所を見せるチャンスですし、頑張りまーすっ」
「将来のお兄さん?は…?」




