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5話
邪魔にならないようにと、しばらくは離れた所から静観していた西原だったが、大部屋の出入り口から人が離れた隙をみて、するっと中に入った。
「西原君!!よく、来れたな」
「えぇ、タイミングよくドアの前がら空きになりましたからね」
晃とここの署長がおり、何名かの刑事が周囲を警護するように居た。外ではどたばたと騒ぎが起きているが、晃は落ち着きはらっていた。
「やっぱ流石、宮前警視正ですね」
「どういう意味だ?君もずいぶんと落ち着いてるし、余裕そうだな」
晃はふぅと息をつくと、にやっと笑って見せた。冬四郎の兄だからか、そんな風に笑うとそっくりだった。
「えぇ、まぁ…それより、どういう事ですか?」
「うん。急に押し入って来たそうだ、窓を破ってな。で、あちこち侵入してあ荒らして…あとは、ここだけだそうだ」
側に居る刑事に確認するように晃が、視線を送ると刑事は固い表情で頷いた。本当に、さらっとした説明だったが西原は状況が飲み込めたようだった。