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5話
署に入った西原は、逃げ惑っている婦警とぶつかった。婦警は、どさくさに紛れるようにして西原の胸に飛び込んできた。少女のようにか弱い悲鳴をあげていたが、西原は危ないから外に出なさいと素っ気なく言い、急ぐようにさっと婦警を引き剥がした。普段の西原なら、相手の顔をきちんと見て優しく言い、腰にでも手を回しそうなのに、珍しくも冷たい対応だった。
西原は婦警の方を、ちらっとも見ずに騒ぎの大きい方に向かって走った。
「俺より強そうなくせに…」
ぼそっと呟くように言い、西原は晃を探して階段を駆け上がった。ばたばたと階段を下りてくる中に、西原に嫌味を言った刑事が混じっていた。西原はその刑事の腕を掴み引き止めた。
「何があったんですか?」
「よ、よく分からないんだ。けど、急に押し入ってきた奴等が署内で暴れ回っている…というより、何か探している風な…?あちこち、見て回ってるみたいで」
「宮前警視正が来られてるはずだが…分かるか?」
刑事が首を振ると、西原は役立たずと呟いて手を放してやった。