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5話
雨が降りそうだなと思っていたが、ぽつりぽつりと冷たい雨粒が、ヘルメットに落ちてきた。西原はむつのマンションの地下の駐輪場にバイクを入れた。むつのバイクの横に止めると、ヘルメットを脱いですぐにエレベータに向かった。だが、オートロックになっているのを今更思い出した。
地上に戻ると管理人室の小窓をこつこつと叩いた。60代くらいの大人しそうな男が出てきて、西原の顔をじっと見て考え込むような素振りを見せた。
「刑事さんかいね?」
「はい。あの、西原と申します」
西原は警察手帳を見せ、名乗った。管理人の男は、うんうんと頷いた。
「宮前むつの部屋を見たいんですが、宜しいでしょうか?」
「えぇ、開けますね」
中から開けて貰い、西原は礼を言うとエレベータに向かった。 住宅街にあるマンションとは思えない程に、しーんとしていた。むつの部屋のある階につくまでに、西原は白い手袋をはめていた。エレベータを降り、足早に部屋に向かった。特に用心するも何もなく、おもむろにドアノブを回すと、刑事から聞いた通り鍵はかかっておらず開いた。