5話
むつはどうなるのか分からないまま、狐と一緒に布団に潜るとすぐに眠りに落ちた。狐のふわっとした毛の柔らかさに、むつは顔を押し付けていた。くすぐったいが、微かにするシャンプーの香りが心地よかった。
ぐっすりと眠ったむつは、うーんと寝返りをうちながら起きた。隣で寝ていたはずの狐は、すでに起きてるようで居なかった。むつはベッドに座ったまま、部屋の中を見渡した。外からの光の入ってこない室内では、何となくの時間の感覚もない。
「あら、おはようございます。もうすぐ朝食の支度が出来ますから」
「おはよ」
ふあふあと欠伸をしながら、むつは顔を洗いに部屋から出た。顔を洗いタオルで拭いてから、鏡を覗きこんでみた。目の下にには黒い隈があり、気のせいか頬も少しこけ、顔色もあまりよくない気がしていた。
「…むつ様?」
「え?あ…何?」
なかなか戻ってこないむつを心配したのか、狐が顔を出した。支度出来ましたよと言われ、むつは頷いた。部屋に戻る前に、もう1度鏡を見て、むつはぺたぺたと頬を触ってみた。
「痩せたのは嬉しいけど、不健康…リバウンド大きくなりそうだな」
はぁと溜め息をついて部屋に戻ると、コーヒーとトーストの香ばしいかおりが漂ってきて、くぅっと腹が鳴った。