5話
「お前…どう思う?」
「どうって…可能性としてあるなら警察?行方不明なのは分かってるはずだから、捜査しに部屋に入ったりしてるかも」
「…やり過ぎたか」
「やり過ぎ?あ、あたし死んだ事になってる‼そうだ…狢が幻覚で…って事はやっぱり警察が?でも、ベッドの中まで見るか?」
自分が死んだ事になっている事を思い出したむつは、下唇を撫でながら考え事をしていた。ベッドのマットレスをどかして、簀の一部が外れる事にまで気付けるような警官がいるとは思えなかった。だが、むつは何か思い付いた事があったのか、唇を触りながら隠すようにしてにやっと少し笑った。
「どうすんのよ…」
「何がだ?」
「え?あ、いや…あんたたちが日本刀を取っても、あたしがここに居れば上手くすれば取り返して…とかって思ってもいたから」
「その手枷をつけてか?」
男の呆れたような声に、むつはむっとしたように唇を突き出して見せたが、すぐに思案顔になった。
「日本刀が目的だった…あたしはどうなるの?」
「それは、まだ分からない。お前が大人しく我々と組むなら…話は別だがな」
「日本刀を探すのには手を貸しても良いけど…仲間にはなれない。なるつもりもない」
「分かった。その言葉を上に伝える。夜分に悪かったな…女狐もすまなかった」
男はそう言うと、ごんごんごんっと足音を鳴らして、部屋から出て行った。むつはその後ろ姿を睨むように、じっと見ていた。