5話
する事もなく狐に進められるがまま、むつはベッドに横たわった。ふかふかの布団に包まれると、あっという間に瞼が重たくなってきた。それだけ身体が疲れているのか、むつは狐に言われた通りに身体を休める事を優先しようと思った。狐もそんなむつの為にか、明かりをそっと落としてくれた。何から何までしてくれる狐に感謝しつつ、むつは眠りについた。
夢も見る事なく、深い眠りについていたむつだったが、ごんっと重たい音と狐の悲鳴じみた声に、はっとして目を開けた。薄暗い中でも、何かが目の前に迫ってきているのに気付いたむつは、身をよじるようにしてそれから逃れた。
「今夜はもうゆっくり休ませるようにとのご命令でしたのに‼何をなさるんですか‼このような急なご来訪、上の方々とて黙っておられませんよ」
狐が気丈にも声を大にして言っていた。
「起きているな?」
男の低い声に、むつは聞き覚えがあった。檻からむつを担いで行く役割をしていた男の声だった。
「…電気をつけろ」
ゆっくりと部屋が明るくなったが、男は覆面をしており顔は見えなかった。むつは起き上がり、狐はと部屋を見回すと他の狐に押し潰されるようにして床に伸びていた。
「夜になると来る狐さんと、あたしを運ぶ役が…こんな時間に一緒?」
組み合わせが不思議で、むつは首を傾げた。