5話
狐は何も答えなかった。むつもそれ以上は聞こうとはしなかった。そのかわりな、むつはにっと笑った。
「じゃあ、偉そうに物言ってみようかな?」
「なんなりと。出来る事には限りがありますよ?おかわりにも終わりがあるように」
「…もぅ五月蝿いわ。1人で食事するのは飽きたの。あなたも、ここで、あたしと同じ食事をしなさい」
むつが指差して言うと、狐は唖然とした様子だったが、くすくすと笑い出すとそそくさと出て行った。そして、すぐに支度をして戻ってくると、むつと向き合うようにして床に座ろうとしたが、むつはソファーをばしばしと叩いた。
「とーなーりー」
「わがままな」
そうは言った狐だが、満更でもなさそうにむつと隣にちょこんと座った。むつは満足そうに頷くと、ようやくスプーンを持った。
「頂きます…うぅ、久々の食事…おぉいしい」
食事がない日が続いたむつの為になのか、スプーンに入ってる野菜はどれもとろとろに煮込まれている。
「お腹の具合が大丈夫そうでしたら、リゾットにも出来ますから、仰ってくださいね」
「うん、うん‼次はリゾットかな。チーズ気持ち多めで、タバスコで」
「刺激物は…良くないですよ?」
「大丈夫、勿体無いから吐かない」