5話
「…え?」
うとうとしていむつは、狐が何かを話し掛けてきたが聞き取れず、振り向いた。オイルトリートメントをつけ、櫛を使って馴染ませていた狐は、むつの頭を持つと正面を向かせた。
「ですから、朝方からの雨がみぞれになって…お外はかなり寒いですよって」
「あ、あぁそうなんだ…もう雪も降ってくるんだろうね。けど、降っても積もらないよね」
「そうですねぇ。残念そうな言い方されてますが…雪がお好きなんですか?」
「まぁ…雪も好きだし、冬は好きかな。寒いの苦手だけど」
「でしょうね。夕方、こちらにいらした時すでに手足が氷のようでしたし」
櫛を通しゆるく三つ編みにすると、狐は満足そうな息をついた。長いし量もあるむつの髪の毛は、洗って乾かして何だかんだして、とするとかなりの労働になっただろう。
「出来ましたよ」
「ありがと。ちょっと慣れた?」
「少しは、ですね。これだけ綺麗な髪なら毎日しても楽しいかもしれませんね」
「あたしも。毎日してもらったら、すっごく楽出来るのにって思うよ」
くすくすと狐は笑うと、櫛やタオルを片付け、テーブルを軽く拭いてから食事を運んできた。まだ温かそうな湯気が立ち上るスープからは、優しげな匂いがしている。




