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5話
十分に身体が暖まり、じんわりと汗が浮かんでくるとむつは湯から出た。ふかふかの良い匂いのするタオルで身体をふき、置いてある服を手に取った。色は違うがどれもチューブトップタイプのワンピースだった。両手を別々に動かせないとこれになるのかと思いつつも、何も身につけていないよりマシだと思い、むつはそれを着た。髪の毛を拭く事が出来ずに、毛先からはぱたぱたと水滴が落ちているが気にしないむつは、部屋に戻っていった。
「あ、もぅ出る時は声をかけてくださいよ」
むつに気付いた狐は、とことことむつの前を通りすぎ風呂場に行くとバスタオルを持って戻ってきた。ソファーに座らされたむつは、大人しく髪の毛を拭かれている。
「オイルトリートメントしますか?」
「んー?全部任せる」
狐は満足げに口の端を持ち上げ、にんまりと笑った。そして、鼻唄まじりにタオルドライした髪の毛にドライヤーをあて、櫛を入れながら乾かしていった。身体は暖まってるし、任せておけば髪の毛も綺麗にやって貰えるのが分かっているだけに、むつはまたしても眠くなってきていた。