5話
「むっちゃんのと…同じ?あっ、そうか…そういう事なんですね」
颯介はすぐに理解出来たようだったが、山上は首を傾げているし救急箱を持ってきた祐斗は、何が何だか分からないな顔をしていた。
「むっちゃんの刀も人は切れないんですよ。このナイフも対妖用って事ですね」
「そうみたいですね」
冬四郎は机にナイフを置くと、救急箱を持ってきた祐斗にごめんねと謝っていた。必要がないと分かると、祐斗はほっとしたように笑みを浮かべた。
「むぅちゃんを拐って行った者たちは、本当に妖退治のエキスパートのようですね」
京井は忌々しげに言うと、見たくもないのかナイフから視線を外した。
「そないなもん…作れるのんおるんやな」
コーヒーをいれて戻ってきた片車輪は、京井に紙コップを手渡した。片車輪の怪我もまだよくならないのか、手には包帯が巻かれたままになっていた。
「えぇ…おそらく、表に出てこなかっただけで裏ではずっと続いていたんでしょうね。私たちが知らなかっただけで…ずっと悪くもない妖が犠牲となってきたんでしょう」
「せやな…」
静かな京井の声には明らかに、怒りが滲んでいたし片車輪の声には悲しみが含まれていた。