5話
冬四郎の運転で、山上、京井、片車輪がよろず屋に向かっている頃、その事務所では颯介と祐斗はナイフをまじまじと見ていた。京井の身体から引き抜いたナイフには、血と肉片がこびりついたまま乾き赤黒くなっていた。
「傷口より触りにくいですよね」
「そうだね。乾いてるけど肉片が…」
「洗ってみます?調べるように言われてるわけですから…」
「う…うん…こういう時、むっちゃんが居ないってなると…本当に困るよな」
「ですね。躊躇いなく触りそうですよね…あと西原さんとか」
「あー西原さんも平気そうだね。切り落とした腕とか持って帰る人だし」
「もう怖いっすわ」
祐斗は夏の事を思い出したのか、腕を擦っている。ナイフにじっと目を向けてはいるが、2人とも自ら持って行こうとはしない。
「あ…これ、洗うにしてもキッチンで?」
「あー…何か嫌っすね。ってより、これ掴んだ片車輪、火傷みたいな怪我してましたけど、大丈夫なんすかね?俺らが触っても」
「どうなんだろ?それも込みで調べろって事なんじゃないかな?」
「捨て身ですよね」
苦笑いを浮かべながら、祐斗は恐る恐る手を伸ばして指先で、つんっとナイフの柄を触った。