5話
「…京井さん大怪我されましたよね?ナイフが刺さって…片車輪に焼いて貰った傷。あれは…」
「えぇ、ただの傷ではありませんよ。彼らが使う物は我々にとって致命的な傷を負わせる為に作られた物じゃないかと…むぅちゃんの刀と同じく」
「今、お怪我の具合は?」
「大丈夫ですよ。宮前さんの咄嗟の判断のおかげで出血も少なく済みましたし…といっても、まだかなり痛いですが」
冬四郎は申し訳なさそうに、へこへこと頭を下げた。だが、京井は嫌味で言ったわけではなかった。ナイフの先には返しがついており、それを引き抜いたせいで身体の中をえぐられ出血は止まらなかった。あのままであれば、今こうして動き回る事は出来なかったであろう。片車輪に焼いて止血して貰い、消毒し軟膏をぬり包帯を巻いて貰ったおかげで傷は痛むものの、治ってきているのは確かだった。
「妖の身でありながら、こうして人に助けて貰う事が多くあるとは思いもしませんでした。むぅちゃんとの出会いも、人との関わりも私には無くてはならない物のようです」
京井は胸の辺りを押さえた。そうすると、怪我をしている箇所が当然のように痛んだ。そして、何故か息苦しいような痛みも感じていた。それが何なのかは、何千年と生きている京井でさえもまだ分からないな物だった。