5話
「お前、昨日のシャツ着るのか?」
西原にとシャツとコーヒーを持ってきた冬四郎だったが西原はすでに昨日のシャツを着て、ボタンをとめていた。コーヒーをテーブルに置き、灰皿に貯まっている吸い殻を捨てた。
「借りるとまた…ぼろぼろにしそうな気がしますからね。この前のも、まだ返してないですし」
変に律儀な西原は、困ったように言うと冬四郎はすくっと笑った。洗濯して、きちんとアイロンもかけてあるシャツに腕を遠し、冬四郎はボタンをとめた。出勤するでもないのにネクタイをしめると、コーヒーを飲んだ。タバコをくわえたまま、火もつけずに冬四郎は何やら考え事をしている。
「とりあえず、俺は昨日言われた通りにカメラから不審者の洗いだしをします。宮前さんはどうしますか?よろず屋に行きますか?」
「そうだな…車、むつのマンションだし。これを持って歩くのもなぁ…雨だし」
「雨だからって、嫌がらないでくださいよ」
「…よし、京井さんには話すか。あの人は、むつの為ならなんだってする人だからな」
「車持ってきて貰うんですか?なら、俺も送ってくださいよ。雨ですし」
にっと西原が笑うと冬四郎は、嫌そうな顔をしながらも携帯を取り出した。
「あ、車は無理だろ。鍵俺が持ってるしな。お前はタクシーでも使えよ。傘は貸してやるから」
「はいはい。じゃあ、行ってきますよ。コーヒーご馳走さま、傘勝手に借りて行きますよ。何かあれば電話しますから」
西原はそう言うと、ジャケットとコートを羽織ってさっさと出ていった。