5話
カーテンの隙間から差し込む光に、眩しさを覚えて目を開けた冬四郎は、寝返りを打って再び目を閉じようとした。だが、ごりっと何かに当たり、んっと目を開けた。冬四郎のすぐ目の前には、何本もの棒状の物があった。すぐに何か分からなかったが、ぼんやりとした頭で昨日の事を思い返していき、あぁと納得した。
ベッドの横、床に敷いた布団の中では西原がまだ、くうくうと眠っていた。起き上がった冬四郎は、伸びてきた髭を触りながら熟睡している西原の寝顔を見ていた。昨夜は何も起こらなかったようで、どうやら西原さ本物のようだ。そんな暢気にも熟睡している西原の顔を見ていると、少しいらっとした冬四郎は手を伸ばしてべちんっと額を叩いた。
「いっ‼てぇ…何するんだよ」
飛び起きた西原は、額を擦りながら冬四郎を睨んでいた。強く叩きすぎたのか、少し赤くなっていた。
「上司に向かって何だよその口の聞き方」
「だ…あ、おはようございます」
「おはよう。爆睡してたな」
ベッドから下りた冬四郎はカーテンを開けて、からからと窓を開けた。ひんやりと冷たく澄んだ空気が室内に入ってきた。
「おぉ、寒っ…と、雨か。嫌だな」
「寒いなら閉めてくださいよ」
「おっさん2人が居たせいか何かくせぇんだよ」
「あ、加齢臭っすか?枕が臭ったらやばいって言いますよね。ちゃんと耳の後ろ洗わないとダメですよ」
西原はそう言うと、使っていた枕をくんくんと嗅いで、大丈夫ですと笑っていた。