5話
毛布に包まれたまま、むつは椅子にどさっと下ろされた。分厚いクッションのある椅子ではあるが、毎回の事ながら尻が痛んだ。座らされるとすぐに、両足が固定された。開かされるわけではなく、足を閉じたまま太股のあたりと足首の所で、ぎゅっと絞められた。
頭上には、歯医者にあるような眩しいくらいのライトがつけられている。むつは大人しくしているが、そのまぶしさには舌打ちをした。
「今日こそは…」
むつを運んできた男が、足の固定まで済ませると居なくなり、変わりに別の男がやってきた。ライトが明るすぎて顔が見えない。男はわざとのように注射器を見せると、むつはちっと舌打ちをしただけで何も言わない。そんのむつの腕を取ると、男は針をつぷっと刺した。ゆっくりと冷たい液体が入ってくるのがむつにも分かっていたが、今はどうする事も出来ない。液体が全て入ると針を抜き、丁寧にも脱脂綿で押さえて止血すると絆創膏を貼った。
血液に乗って、冷たい液体が肩に心臓にめぐっていく感じがしていた。そして、だんだんと眠くなるような、ふわふわとした変な心地になっていった。今日もか、と思いながらむつは唇をきつく噛み締めた。