5話
がちゃがちゃと柵を揺すっていたむつだったが、だんだんと疲れてきたのかその手は力なく、ずるずると下がっていった。そして、頭を柵に押し付けるようにしてもたれた。
どこからか、哀れむような溜め息のようなものが聞こえてきた。むつは、きっとそちらを睨んだが、本当にそっちだったのかさえも分からない。
ここに捕らわれているのは、一体何者たちなのであろうか。気配からして、人ではない気がしていたが、実態はよく分からない。
むつは1人、ふっと笑った。
先程までとは、がらっと雰囲気が変わりめそめそと泣く事もなく、いつもの強気な様子が少しずつ戻りつつある。ここから、抜け出すにはやはり機会を待つしかない。だが、そうゆったりと構えている気にもなれない。一緒に働いている面々、兄である刑事がここを突き止めるのは無理だ、ときっぱりと決めつけると、あとはどうにかなるような気がしてきていた。そうやって、気持ちが元気になるにつれ身体にも変化が出てきた。きゅううっと久しぶりにも、情けなく腹が鳴った。それが聞こえたのか、どこからか、忍び笑いような物が聞こえてきた。むつもつられたように、笑っていた。
「…ここから出るよ」
むつが笑みを口元に浮かべたままで言うと、声なき声がどうやってとたずねてきた。それは、一緒に閉じ込められている何者かの声なのか、むつ自身の問いなのか分からない。だが、むつは出るの、と呟くように言った。