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5話
「うっ…っ」
固く冷たいコンクリートの上で身動ぎをしたむつは、身体の痛みで目が覚めた。コンクリートの上に寝ているからというだけではなく、身体のあちこちには痣が出来ていた。それが擦れて痛かったのだ。
手探りにペットボトルを見付け、こくりとゆっくり一口飲むと、はぁと息をついた。唇から流れた水滴を拭う気にもならず、額を床につけるようにしていたが冷たさに身体から体温が奪われていくだけだった。ゆっくり身体を起こして、ずりずりと後ろに下がり、壁に背中を預けるように座り膝を引き寄せた。膝の上に顎を乗せて、はぁと溜め息をついた。
薄暗い穴蔵のような場所には、むつの他にも捕らわれている者が居るのか、時折溜め息のように漏れる息と、身動ぎをするさかさかと乾いた音がしていた。だが、誰がどこにいるのか分からず声をかける事も出来ない。向こうからは見えているのだろうか。視線を感じる事はあっても、あまり気にはならなかった。
こんな所に毛布1枚だけで閉じ込められている今。周りの目を気にしても、意味がない事をむつは分かっていた。