5話
風呂から出た冬四郎は、むすっとした顔付きでがしがしと頭を拭いていた。そんな様子を面白がるように、西原は眺めていた。
「裸のお付き合いですね」
くっと西原が笑うと冬四郎は、ぴくぴくっと頬を痙攣させた。じろっと西原を見るも、西原は全く気にしていない。客用の布団に寝転がり、西原は伸びてきた髭をぞりっと撫でた。冬四郎もここ数日は髭を剃っていないせいで、伸びてきている。疲れきった顔に、無精髭。人相が悪く見える気もしていたが、この件が片付くまで署に出るつもりもなく、ほったらかしにしている。
「それで、どうしますか?」
寝転んだままで、灰皿を引き寄せタバコを吸い始めた西原は、ベッドの上の棒状の物を見た。紫、白、紺とばらばらの色の布に包まれている物は、全部で6本だった。
「相手がどこに居るのか、どう接触したら良いのか分かりませんよね?」
「あの男がこちらに接触してくるのを待つしかない…かもしれないな」
「その男って何者なんですか?むつと同棲してたって事はよっぽどの男ですよね」
「どんな男なのかは分からないな…ただ、普通じゃない気がするな」
仮面をつけた男はむつからこちらの事をある程度は聞いているで、祐斗の名前を知っていた。むつがそうも人の名前を教えてまで話しているとなると、むつにとっては信用のおける男だったのだろうか。




