5話
食事を終えた2人は、コーヒーを飲みながらタバコを吸っていた。寝不足の冬四郎は、腹も満たされたからか、欠伸を連発している。
「寝たらどうですか?」
「そうだな…シャワー浴びて寝るか」
長くなった灰を、とんとんっと灰皿に落としながら冬四郎はまた欠伸をした。目尻に浮かんだ涙を、指で擦りながらちらっとソファーに目を向けた。最後の一口を吸い、火をもみ消したものの立ち上がる気配はない。
「…まだ信用してませんね?」
「…あぁ」
西原は溜め息をついた。むつ、晃の偽者を目の当たりにしただけに、目の前にいる西原も本物かどうか、冬四郎は疑っていた。西原本人なのだろうが、どうしても信用しきれていない自分に嫌気が差していた。
「それ、持って入ったら良いじゃないですか」
ソファーの上に置かれた、何本もの棒状の物を指差しながら西原が言うと、冬四郎はうぅと唸った。
「優柔不断ですね。なら、こうしましょう‼一緒に入ればいいんですよ、風呂に」
「えーやだな、それは。そしたら、誰がそれ見張っとくんだよ」
「わがままですね…じゃあ、それ持って一緒に風呂入ったらいいんですよ。そうしましょ‼俺も早めに寝たいですし。服、貸してください」
冬四郎は悩んだようだが、仕方ないと言い立ち上がると寝間着として使う服とバスタオルを西原に向かって投げた。
「そんなに風呂、広くないからな。あんまりくっつくなよ」
「まじですか…はぁ、じゃあ未来のお兄さんの背中でも流してあげますよ」
結局、一緒に風呂に入る事を決めると冬四郎も服とバスタオル、ソファーの上の棒状の物を持つと風呂場に向かっていく。西原は何となく面白い気がして、とことこと後から付いていった。