5話
久しぶりに自分の部屋に帰ってきた冬四郎は、ソファーにコートを置きキッチンに立った。
「これ、どこに置きますか?」
「ソファーの上にでも置いといてくれ。荷物持ち、ありがとうな」
言われた通りに西原は何本もの棒状の物をソファーの上に置くと、下敷きになった冬四郎のコートを引っ張りハンガーにかけた。
「ハンガー借りますよ」
「あぁ、適当に使ってくれ。で、適当にくつろいでくれ」
「お言葉に甘えて、そうさせて貰います」
西原はコートとジャケットを脱ぐとハンガーにかけ、ネクタイも外して丸めてコートのポケットに突っ込んだ。タバコに火をつけながら、シャツのボタンを外してソファーにもたれるようにして、ラグの上に座った。はぁぁと煙を吐き出しながら、西原はコンビニの袋を漁った。仕事を終えて帰ってきたからには、ビールの1本も呑みたい所だったがそうもいかない。
「ノンアルコール…」
取り出した缶を見て西原は呟いた。
「よく、そんな物呑む気になるよな」
「気分だけでも。宮前さんの分もありますよ?少しずつでも進展してますし、気分転換は大事ですよ」
冬四郎はコンビニの袋から弁当を取り出すと、電子レンジに入れて温め始めた。一緒に買ってきた、カップの味噌汁を持ってキッチンに行くと、お湯を注いでくるくると箸でかき混ぜた。インスタントとは言えど、味噌汁の香りに何となくほっとさせられる気分がした。