5話
実際、冬四郎の疲労はピークにも近い。むつが拐われたと知ってから、ほとんど眠る事も出来ず、心休まる時もなく身も心も疲れきっていた。そんな冬四郎を心配するかのように、管轄が違うにも関わらず無理矢理捜査に加わっている西原は、刑事として動きもせずに冬四郎に付き添っていた。西原は西原で、警察の捜査情報をよろず屋に集まり、むつを探している者たちに流そうと思って捜査に参加しただけであり、警察よりも1歩も2歩も先を行く部外者と主に動いた方が良いのではないかと思っている。
「今日、泊まって良いですか?」
「最初からそのつもりで、来てもらってるから安心しろ。…コンビニ寄るか。家に何にもないしタバコもない」
「そうですね。とりあえず、何か腹に入れないと…宮前さん、ちょっと痩せましたか?」
西原に言われ、冬四郎は空いている手で頬をぺたぺたと触ってみたが、自分では痩せたかどうかは分からない。ただ、数日しか経っていないのに、そう見えるという事はよほど今回の事にショックを受けているという事なのだろう。
「…痩せたか?痩せたより、やつれただな」
冬四郎は呟くと、見付けたコンビニに入って行った。西原もあとから入っていくと、店内の暖かさにほっとした。