5話
「ふっ…ふっくしっ‼あー…」
「おっさんみたいですね。最後のあーって言うのが」
ずずっと鼻をすすった冬四郎は、寒いのにも関わらず、コートを手に持って西原と並んで歩いていた。西原は両手で抱えるようにして、何本もの棒状の物を持っていた。どれも布に包まれており、何なのかが分からない。
「おっさんだならな。それより、お前大丈夫か?刑事としての捜査の方は…」
冬四郎はそう言うと、はぁと溜め息をついた。
「大丈夫ですよ。むつが拐われて正確には今日で4日目なんですよね?何かもう2週間くらいの勢いで…ちょっと焦ったんですけど、落ち着きましたから」
へへっと西原は照れくさそうに笑ったが、冬四郎は呆れて物も言えなかった。
「今日の所はここまでだな…山上さんたちもまともに休んでないし、少し休まないといけないしな」
冬四郎は街灯の下を西原と並んで歩きながら、そう呟いた。西原も同感なのか、頷いてみせた。
むつのマンションを出てから、西原と共にあちこちに行き、すっかりと暗くなっていた。帰りながら、よろず屋の事務所にいる山上には電話をし今日の所は家に帰ると伝えていた。山上は深くは聞かずに、分かったとだけ言っていた。ほとんど寝ていない冬四郎の声に、疲労が色濃く出ているのを感じ取ったのだろう。