211/542
4話
「そうだな…」
西原が手で押さえている箇所に、何があるのか分かったのか冬四郎は微笑んだ。
「むつの事、本当に好きなんだな」
「お兄さんて呼べる日も近いかもしれませんよ」
「…一生来て欲しくないな」
「むつが嫁に行けなくなったら、どうすんですか?ま…結婚しないって昔言われましたけど」
はぁと西原は溜め息をつくと、ベッドの簀のように渡してある板をどけようとした。置いてあるだけのようで、簡単に外れた。それをマットレスの横に立て掛けると、冬四郎はさらに板の部分を外そうとした。これを外せば、おそらく引き出し部分の中が見えるはずだった。だが、しっかりとネジで固定されていた。そうなると、ここに何かを隠す事はないだろう。しまうにも取り出すにも面倒くさすぎる。
立て掛けた簀がずれたのか、かたんっという音がした。冬四郎は気にもしなかったが、西原は倒れたらと振り向いた。すると、簀の板の一部がぺろんと折れていた。
「あ…」
西原は冬四郎の肩をとんとんっと叩いた。振り向いた冬四郎に、西原はあれと指差した。
「あ…」
冬四郎も思わずと言った様子だった。