4話
西原の慌てように冬四郎は、声を上げて笑った。冬四郎が声を上げて笑うのが珍しく、西原は少し驚いたような顔をしたが、困ったような顔付きになった。
「影武者か…影武者は良いな。あの馬鹿の影武者もきっと馬鹿なんだろうな」
「…宮前さん、お兄さん嫌いなんですか
?」
「いや?まぁ好きじゃないな」
いつもの涼しげな顔をして、さらっと冬四郎が言うと、西原はふーんと頷いた。
「で、それより…どういう事ですか?」
「何かよく分からないんだけど…あ、そういや西原君はむつが誰かと同棲してたとかって聞いた事あるか?」
「同棲ですか?いえ、ないですね…付き合ってる間はなかったと思いますけど。その後は何も知らないですね。噂で仕事辞めたらしいとかは聞いてましたが、夏に会うまでは連絡も取ってませんでしたし」
「そうか…実はさ、むつと同棲してたって男が現れてだな」
冬四郎はそこで言葉を切ると、西原の様子を伺うようにちらっと見た。西原は眉間にシワを寄せていた。
「その男がな兄貴に変装してやってきたのがさっきだな。で、そいつが言うにはむつを拐ったのは自分の仲間たちだって言うんだ」
「え、ちょっと待ってくださいよ。その話、鵜呑みにしてるんですか?仲間が拐って言ったとか…もうその時点で信憑性ないじゃないですか」
西原の言う通りだった。冬四郎も男の言う事を信じる気にはなれなかった。男が、むつが拐われた理由は日本刀だと言っていたが、それが本当ならば見付けたとしても気付かれてはならないと思っていた。