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4話
「悪かった」
ぽんぽんと冬四郎は西原の肩を叩いた。西原が顔を上げると、冬四郎がにやりと笑っていた。普段そんな笑い方をあまりしない冬四郎がすると、何となく凄味がある。
「…悪かったよ、本当に。相手の姿が見えなさすぎて、西原君も偽者なんじゃないかと疑ってたんだ。諦めが早すぎるからな…俺があちこち部屋を見て回るのが面白くないんだな?」
「う…まぁ、はい。身内だから仕方ないですけど…ん?俺も?あの面子の中に偽者が居たんですか?」
「あぁ…最悪な偽者だったぞ。1回目の偽者は襲撃者の中にむつ。2回目はさっきの兄貴だ」
「兄貴…って、え…警視正!?は?…えぇ‼俺、遅刻の原因は警視正に付き添っててとか言っちゃいましたよ‼えぇーまじですか?どういう事なんですか?むつも警視正も偽者?どういう事ですか?警視正は影武者的なやつですか?」
西原の驚きは大きく、両手を広げてわなわなと振るわせていたかと思うと、頭に手を当てている。半笑いのような顔をして、冬四郎に助けを求めるような目を向けていた。