4話
「やっぱり無いのかもしれませんね。それか、先に持っていかれたのか…」
冬四郎の反応の無さを見てか、西原は残念そうに言った。だが、冬四郎は膝をついたまま考えるように、顎を触っている。
「本当にそう思うか?」
「え?」
「それなら、俺はもう少し残るから西原君は署に戻って他の指示を貰ったら良い。立合がなくては、部屋の中を見れないなら…他の者をここに残していけば良いだろ?」
立ち上がった冬四郎が、少し顎を反らして西原を見下ろすような目付きをした。身長的にも少し冬四郎の方が高く、見下ろされている西原はむっとしたような表情をした。
「嫌ですよ。宮前さんが家捜ししてるのは、まぁ仕方ないですけど…他のやつがむつの物に触るってなると不愉快です。今だって、どこで何されてるのか分かんないのに‼これ以上、部屋であれ物であれ何されるか分からないのは…耐えられませんよ」
珍しくも泣き出しそうな顔をした西原を冬四郎は、それでも見下すような目付きで見ていた。
「宮前さんには分からないかもしれませんけど…俺、蚊帳の外じゃないですか。わりといっつも…今も事務所でどんな風に話が進んでるのか分からないですし…結構、腹立つんですよね。宮前さんが必死なように、俺だって必死ですよ。捜査に加えて貰えて良かったと思ってますけど、警察よりよろず屋の方が先を行ってるわけですからね…役立たずになりそうで」
消え入りそうな声で怖いですと、言った西原を見て、冬四郎はふっと表情を緩めた。