4話
散らばっている綿や羽毛で滑らないように気を付けつつ、冬四郎と西原は先程と同じようにクローゼットに入り込み、壁を触っていく。だが、何か手を加えたような跡は見られない。
「本当にあるんですか?」
「そう聞かれると何とも…可能性の話だからな」
冬四郎はクローゼットの中を西原に任せ、リビングに戻ると荒れた室内を見られない。事務所の机の引き出しで、2重底を作るくらいだから、部屋の中にもありそうな気がしていたが無いのかもしれない。だが、そうなると日本刀はどこに消えてしまったのか。すでに覆面の者たちの手に渡っているとしたら、むつとの交換になる材料がなくなる。そもそも、襲撃をかけてくるような者たちが交換に応じるとも冬四郎には思えなかったが、何かしらこちらが優位に立てる物が欲しい。
諦めた西原が出てくると、冬四郎は困ったような顔をした。西原は最初から信じていないのか、この結果で当然だというような顔をしている。
「無い可能性のが高そうですね」
「そうだな…」
「あと、隠しやすい場所となると…天井?」
「いや、それこそ無理だろ。天井に穴開けてたら…すでに細工じゃなくて工事になるだろ」