4話
クローゼットに入った2人は、壁などを手で触りながら何か無いかと調べていたが何もなさそうだった。
「上はどうなんでしょうか」
西原は背伸びをして、上の段を見た。何が置いてあったのかは分からないが、上は空っぽのようだった。冬四郎は少し下がって、上の棚の部分を見ている。
「椅子が必要だな」
「肩車でも良いですよ」
「お前が俺を肩車するのか?」
西原は上の段と冬四郎を交互に見た。そして、へらっと笑うと椅子持ってきますとダイニングに向かっていった。ご丁寧にも2つの椅子を持って来た西原は、横に並べて置くとその上に立った。
「ここ、何が置いてあったんでしょうか」
「さぁな?けど、服とかしまってたクローゼットなんだから、そういうのなんじゃないか?」
「ですかね?」
壁を触っていたように、冬四郎と西原は腕を伸ばして奥まで触っていく。椅子に上っていても、1番奥までには流石に手が届かない。
「ここじゃない気がします。我々でも手が届かないのに、むつには無理ですよ」
「そうだな」
すとんっと椅子から降りた西原は、まだ腕を伸ばしている冬四郎を見ながら、うーんと唸っている。
「何だ?」
「いや…何かよく分からないんですよね。むつって面倒くさがりな所あるじゃないですか?それに不器用だったり、適当だったり…そんな、むつが2重底みたいな物を作るっていうのが不思議ですね。あれって、見付からないようにするにはきっちり計って作らないと無理ですよね?それを事務所の机に作っていたっていうのが意外すぎます。それに、ここ賃貸マンションですよね?そんな物、作れるんでしょうか?」