4話
冬四郎はジャケットの内ポケットに手を入れると、手帳を取り出した。古びて分厚い手帳だった。
「それは?」
「むつが事務所の机に隠してた手帳だ」
「隠してた?」
手帳の中が気になっているのか、西原の視線はじっと手帳に注がれているが冬四郎は、渡す気はないようだった。
「あぁ、手掛かりを探すのにむつの事務所のパソコンを開こうとしたらロックがかかっててな、解除せずに開くと皆との写真が保存されてるだけだった。でな、暗証の控えがないか探してる時に、机の引き出しが2重底になってるのに気付いて、開けたらこれが出てきた」
「そうまでして隠しておきたい手帳だったんですか?」
「いや、どうだろうな?パソコンの暗証の控えがあっただけであとは白紙だった」
冬四郎の言っている事を信じてないのか、西原は腕を組みじっと見据えていた。
「…あの3人は2重底の事は?」
「知らないはずだ。山上さんは分からないが、湯野さんと谷代君は確実に知らないだろう」
「わざわざ2重底にしてまで…かなり用心深いというか…手元に持っていたくはなくても、無くしたくもない…そんな感じですか?」
「だろうな。これが今回の件に関係おるかは分からないが、そこまでする程の用心深さだ。もしかしたら、この部屋にも」
「そういうの作ってあるかもしれませんね」