4話
「何か探してたみたいですよね」
西原はまだ晃が偽者で仮面の男の変装だった事も、男が言うにはむつの日本刀を狙っている事も知らない。冬四郎はそれをここで言うべきか、少し悩んでいた。
「けど何を?ぬいぐるみも切り裂いてまでってなると…小さな物なんでしょうか?」
西原が言うと、冬四郎は首を傾げた。男の話では日本刀だったが。他にも何か、探している物があるのだろうか。それとも、カモフラージュなのか、八つ当たりのようにやっただけなのか。
「探し物か…むつが何か特別な物を持ってるとしたら、日本刀くらいじゃないか?」
「あ、あぁ…特別ですけど、むつじゃないと抜けないやつですよ?そんなの盗んで何になるんでしょうか」
「…そうなのか?」
それは知らなかった冬四郎は、驚いたように目を丸くしていた。むつの父親が使っていたであろう、という程度でしか知らなかったのだ。
「えぇ、菜々ちゃん所での仕事で借りようとしたんですよ。俺も剣道ならそこそこ出来ますから…けど、抜けなかったんですよ。むつが言うには、能力がない人には抜けないって」
「そうなのか…」
「ってなると、模造刀と大差ないですよ?そんな飾りみたいなもの、盗みますか?」
西原の話を聞き、冬四郎はますます首を傾げる事になった。それに、日本刀なんかを白昼堂々持ち出せば、かなり目立つたずだ。