4話
車を走らせながら、冬四郎はむつもなぜ、監禁されたりしながらも日本刀のある場所を言わないのかと疑問に感じていた。むつが持っているのは、むつの本当の父親の形見と言っても良い物だから、手放したくないのかもしれない。だが、それが無くなったとしてもむつには能力が備わっている。自身の身が自由になるなら、そのくらいと冬四郎は思わないでもなかった。むつにとっては、それほどまでに特別な物なのだろうか。
今、こうして考えてみれば妹とは言えど、むつの事はあまり知らない気がしていた。家出を繰り返していた時期もそれが落ち着いた時も、大学生になった時、就職した時。むつが何をしていたのか、冬四郎はほとんど知らない。だが、家族とはそんな物なのじゃないかと思っていた。一緒に過ごすからと言って、何でも分かるわけではない。大人になれば、それこそだんだんと自分の事を言わなくなる。自分で出来る事が増えれば、干渉する事もされる事も嫌ってくる。だから、冬四郎の知らないむつがいて当然といえば当然だった。だが、それでも近くに居ると知りながら連絡も取らず会わず居たのは、何故だったのか。連絡を取って会っていれば、こんな事にもならずに済んだのか。それは誰にも分からない事だった。
ただ、確かなのは、接し方が分からなかったのだ。小さい頃は、簡単だった。なついてきた妹の面倒をみたり、心配をしたりしていれば良かった。だが、大人になったむつとの距離の取り方が分からない。よろず屋で働くようになってからは、連絡を取るし一緒に過ごす事も嫌ってくるある。だが、それも仕事、事があるからだった。むつと2人で、仕事も何もなく一緒に食事でもした事はあっただろうかと冬四郎は考えた。