4話
「むつと妖の距離が近い事と何の関係があるんだ?」
「人と妖が馴れ合う事に、俺の所属している所はよく思っていない。それに、あの日本刀は妖退治に作られた物。それを使って、妖の為に動く事をよく思わない連中は多い…だから、日本刀だけでも取り上げたいと思っているんだ。それを使える者、妖を殺す事に抵抗のない者に使わせたいんだ」
「何で、それを先に言わなかった?」
「…人には関係ない話だ。人が居ない時に話すからこそ、意味があると思わないか?」
男の含みのある言い方に、山上も京井も片車輪もぐっと黙った。男は、遠回しにむつに近付くなと釘を刺しているつもりなのだろう。
「あいつらはまだ、目当ての物を見付けていない。だから、むつは生かされているし、連れ去られる前に拷問にもかけられた…むつの事だ。相手が何者でどんな目的なのか分からずとも簡単に吐く事はないだろうが…何をされるか分からない状況に変わりはない」
「…あなたは、そちら側なんですよね?むぅちゃんを拐ったやつらの仲間…それなのに、何故?ますます信用が出来なくなります」
「それは言っただろう?むつには借りがある。あいつがお前らなんかと馴れ合うのは、面白くないが…むつなりの信念があってしてる事にまで口出しは出来ない。だが、こちら側の今のやり方には賛成も出来ない。お前の為じゃない。むつの為に動くだけだ」
「要は、お前もむつが好きなんだろ?」
「そうだな。一緒に過ごした時間は短くても充実していたし、あれほど楽しかった事は、今までもこれからもない気がする」
「顔を見せる事が出来ないのも、そういうわけなんですね?」
「あぁ、自分の居る場を裏切る事は…出来ない」
男が呟くように言うと、山上と京井は分かった、とでも言うように頷いた。