4話
「何でそう分かるんですか?だって、足切って血の臭いつけさせたりしてるような人たちでしょ‼むつさん傷だらけになっちゃいますよ‼」
「…むつから聞いた通り、本当に真っ直ぐな子だな。谷代祐斗君」
フルネームで呼ばれた祐斗は、男の顔をまじまじと見ていた。仮面をしているから、顔は分からないが何となく優しげな顔立ちをしているのではないかと、想像していた。
「何で名前…むつさんと会ったんですか?」
「だいぶ、前だ。まだ…少し寒かった頃、春先に1度会ったな…それよりちょっと落ち着け、むつの部屋が荒らされて物がなくなってたら危ないが、まだそれは大丈夫だろ?」
「何でですか?」
「あいつらが欲しいのはむつが使ってる日本刀だ。ついでに、むつが自分たち側につけばいいと思ってるはずだ…あいつの事だ、つくはずないと思うからな。そうなると危ないな」
「あいつらって…何なんですか?」
「質問ばっかりだな」
「分からないから仕方ないですよ。分からない事を恥じるのも大事だけど、それを承知で聞くのも大事って教わりましたから」
男が呆れたように言うと、祐斗は胸をはって威張るようにして言った。どんな相手だろうが、すぐに打ち解ける程の素直さと純粋さが、祐斗の良い所だ。
「…むつか?」
こくこくと祐斗が頷くと、男は溜め息のような笑みを漏らした。