4話
「だとしても、そんな話を聞いた事ないぞ」
冬四郎がそう言うと、晃は冬四郎の方を向いて少し責めるような目をした。
「お前、むつがここで働くようになる前まで連絡も取らず会わずだっただろ?そんなんで、何を知ってるって言うんだ?」
本当の事だったようで、冬四郎は答えにつまっている。むつと冬四郎は、兄弟ではあるが血の繋がりはない。むつが進学の為に、出てきたのは知っていても会う機会など年に1度あるかどうかの程度だった。それが、よろず屋でむつが働くようになり、仕事の依頼をしたりなどで会う機会が増え、連絡も取りお互いのマンションの行き来をたまにでもするようになったのだ。
「…今回の件、俺にも少し責任がある。だから、むつを救うのに協力はする」
「それなら、顔ぐらい見せてくれてもいいんじゃありませんか?そんな姿だったり、仮面してたりして…見られたら困る顔ですか?」
京井が穏やかだが、どこか刺のあるような言い方をすると、晃はふんっと鼻で笑った。
「お前たちに見せる必要はない。むつだけが知っていればいいだけの事だからな」
「………」
むっとした表情の京井はゆっくりと立ち上がると、晃の前に立った。京井も晃も背丈が高く、身体つきもしっかりとしているだけに、その2人が睨み合っているとなると、なかなか迫力がある。