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4話
冬四郎と山上は顔を見合わせると、はぁと揃って溜め息を吐いた。黙って聞いていた西原が、ついと顔を上げた。つぶらな瞳の狢が、びくっと身体を震わせると1歩うしろに下がった。
「あのさ、聞きたい事が2つ。いいですか?」
西原は狢にではなく、山上に許可を得るように聞いた。山上は、頷いた。
「先ずさ、何でむつが捕まってたのか?それに、あいつの力があれば逃げる事って可能性としてはあったと思うんだけど…何か聞いてるか?」
「理由?それは知らない。力?それも分からない。でも、あの鎖を女の力で外すのは無理だ。それに普通の鎖じゃない…何か力が抜けるって言うか。女もそれ言ってたな…これさえ無ければって」
「そうか、ありがとうな」
礼を言い、西原は狢を頭を撫でた。急に手が伸びてきて、身構えていた狢は西原をぽかんと見ていた。
「あとは、むつが次はどこに連れ去られたか分かればな…」
山上がそう呟いた。今はそれが何よりも知りたい事なのは、皆も同じ事だった。むつが生きている事は確実になり、沈んだ空気は一転したものの次なる手掛かりの無さに、焦りが募るばかりだった。